◎田中美絵子委員1948年から1996年の間において、精神疾患や障害のある人に本人の同意がなくても不妊手術や中絶手術の実施を認めた旧優生保護法により、約1万6,000人の方が強制的に不妊手術をさせられたと国の統計があります。2019年に被害者に320万円を支払う旧優生保護法一時金支給法が施行されましたが、2024年7月末の時点で支給認定者数は1,129件にとどまっているとのことです。
そこで、県における旧優生保護法下における手術の実施件数と相談件数、一時金を受け取った人数をお示しください。
◎柚森直弘健康福祉部長 県に残っている資料で、旧優生保護法に基づく優生手術が行われたと推定できる方は126名です。また、相談窓口を開設した平成31年4月から令和6年8月末までに、相談件数は58件、旧優生保護法一時金支給の認定件数は22件となっております。
◎田中美絵子委員 手術の実施件数に対して、一時金の請求人数は大変少ないという印象を受けます。
私の知人に、旧優生保護法下で強制不妊の入所者を送迎していた方がいらっしゃいます。県内の知的障害者施設の元職員で、今年88歳の方です。今でも利用者の方と交流が続き、当時のことを大変悔やんでいます。今年は最高裁が旧優生保護法を違憲とする判決を下しましたが、1948年に旧優生保護法が施行されてから76年が経過し、当事者や関係者の多くは高齢者です。当時の施設や資料、記録が残っておらず、また保護者や配偶者といった家族が亡くなっていないケースも多いとお聞きしています。当事者は当時のことを理解できていないことが大半です。
県において、個人資料がなく、当時の記録を確認できない場合、県はどのように対応しているのか、お尋ねします。
◎柚森直弘健康福祉部長 一時金の認定請求を受け付けた際に、県が所有する個人資料では確認ができない場合は、国の取扱通知に基づき、記録を保有している可能性のある医療機関や福祉施設などの関係機関に対し、医療機関でのカルテや福祉施設のケース記録などがないかを問い合わせたり、当時の状況を知る職員がいる場合にはヒアリングを行うなどの調査を行った上で、その結果を国に提出をしております。
◎田中美絵子委員 ぜひ柔軟で丁寧な対応をお願いしたいと思います。
旧優生保護法一時金支給法が2019年に施行されてから5年が経過し、請求期限は2029年となっており、期限まで残り5年となっています。一時金は県が窓口となっております。少しでも多くの方に一時金を受け取っていただける周知が必要であると考えますが、周知方法について、県はこれまでどのような取組をし、今後どのように行うのか、お考えをお伺いします。
◎柚森直弘健康福祉部長 県ではこれまで、制度周知のため、リーフレットやポスターを作成し、医療機関、障害者福祉施設、関係団体などに配布するとともに、市町に対しては、障害者手帳更新時などの各種行政サービスの手続の機会を利用した案内をお願いをしております。また、県や市町の広報媒体、ホームページなどを通じた周知も行っております。
今後とも、支給対象となり得る方に情報が届くよう、引き続き周知に努めてまいります。
◎田中美絵子委員 これまで以上に周知に力を注いでいただきたいと思います。
7月の最高裁の違憲判決を受け、総理は原告に初めて直接謝罪し、全面解決に向け、大きな前進を見せました。また、不法行為から20年で損害賠償請求権が消える除斥期間適用の主張撤回を表明し、手術を受けた本人だけでなく配偶者も補償の対象とする考えを明らかにしました。
今後、新たな補償制度が創設される見込みです。県としても国の動向を注視しながら、きめ細やかな対応をお願いしたいと思いますが、今後の取組についてお考えをお伺いします。
◎柚森直弘健康福祉部長 県では、これまでも国の一時金認定請求に関する相談窓口を設置し、申請書の書き方や個別事案の調査対応などを行うとともに、制度の周知などを行ってまいりました。現在、国では新たな補償制度の検討を進めており、国の動向を注視するとともに、具体の手続などが決まり次第、県民への周知も含め、しっかりと対応してまいります。
◎田中美絵子委員 ぜひよろしくお願いします。
1957年に旧厚生省が都道府県に対し、手術の件数を増やすよう文書で要請していたことが判明しています。手術の人数は、人口の多さに関係なく、地域差が大きいのが特徴です。北海道や宮城県は1,000人を超えていますが、石川県は今ほど126人とお聞きしましたが、私は人数の大小ではなく、被害者が存在し、今でも多くの関係者や当事者が苦しんでいることが問題だと思っています。
最後に、これまでの長い歴史を振り返り、また今年7月の最高裁の判決を受けて、旧優生保護法に関する知事の所感についてお伺いします。
◎馳浩知事 旧優生保護法の下、特定の疾病や障害を有することなどを理由に本人の同意のない優生手術などが行われ、心身に多大な苦痛を受けてこられた方々の思いを察すると、大変心が痛む思いであります。全ての方がひとしく基本的人権を享有するかけがえのない個人であり、疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら、共に暮らす社会の実現が不可欠であると考えています。
現在、国において検討されている補償制度が決まり次第、県としても、長年にわたりつらい思いをされた皆様のお気持ちに寄り添って、適切に対応してまいりたいと思います。
2024年09月26日 10:25